| 自分だけで抱え込まないで欲しい。 |
| ─ 「パチンコ・パチスロ依存症を予防するためのホームページ」はどのような目的で作られたのでしょうか?設立にいたる経緯を教えていただけないでしょうか? |
パチンコは娯楽として健全に楽しめるものですが、子どもの置き去り事件などによってパチンコをすることは「悪いこと」であるかのように、イメージが悪化しつつあります。パチンコの方が依存を作り出しているのではないかというように思われている傾向があり、依存症に対して正しい知識が伝わっていません。
そこで、東京都遊技業協同組合さんから社会健全化・業界健全化のために、「依存症とはどういうものであるのか」ということをきちんと伝えたいというニーズが生まれました。そして、東京都遊技業協同組合さんと、当社の顧問もやっていただいている心理学の分野で非常に著名な早稲田大学の加藤諦三教授の研究室と共同して設立することになりました。 |
| ─ どのくらい前から活動されているのでしょうか? |
2003年から活動しています。2003年から2004年にかけてはプログラムを作るために国内外のギャンブル依存症の現状を調査しました。そして調査した結果、やはり依存症は世間的に正しく伝わっていないことを痛感しました。依存症は病気であること、そして時間はかかりますが治療可能であること、そしてパチンコだけが「悪」なのではなく、生活環境など様々な要素が絡み合って依存症になってしまう、ということを伝えたいと感じました。
やるべきことは沢山ありますが、そういったことを伝える啓発活動を行っていかなくてはならないと思っています。2005年3月にはパチンコ・パチスロのホールなどの経営者さんを集めて「パチンコ・パチスロ依存症予防対策プログラム-シンポジウム」を開きました。 |
| ─ 依存症になりやすいタイプとはどのような方でしょうか? |
パチンコ・パチスロ依存症のメカニズムとしては、3つの要因があります。
まずは「パーソナリティー」であり、その人自身の性格・人格からの要因です。ご協力いただいている専門家の方の見解では依存症になる方には、
・物静かで几帳面で真面目
・素直で淡々としている
・些細なことで傷つき、他者からの批判に弱い
・気を使い過ぎて疲れてしまう
・人間関係はあまり得意ではない
・自尊心が高い、他人からの干渉を嫌う
当社では企業で働く方の心の健康をサポートしているのですが、今日本で一番問題視されている、うつ病になる方のパーソナリティーと非常に似ています。やはり真面目な方はストレスを感じても自分の殻に閉じこもってしまい、うつ病になってしまう方もいれば、ストレス発散方法にアルコールを選ぶ方、そしてギャンブルにのめり込んでしまう方がいるようです。
2つ目の要因は「心理的・精神的な圧力」であり、これは仕事や家庭・人間関係のもつれなどにおけるストレスなどが挙げられます。
そして3つ目は「接触体験」です。これは依存症に陥る前からパチンコ・パチスロと接触する機会があった、また子どもの頃に親に連れられパチンコ・パチスロに慣れ親しんだ、という体験があり、パチンコという行動に入りやすい傾向がある方です。
やはりこういった問題の根底にあるのは家庭環境にあります。DVや虐待の加害者は親から虐待を受けていた過去があったり、アルコール依存症患者の方の親も実はアルコール依存症であったなど。もちろん全ての人がそうであるわけではありませんが、やはり家庭環境がその人の人格形成に大きく影響を与えます。問題のある家庭環境で育った方は、その家庭を「自分が支えなければならない」という責任感を持ってしまい、生真面目であったり、自己表現が苦手で自分の殻に閉じこもってしまうという、パーソナリティーが育ちやすい傾向があります。そのような方が自分で出来るストレス発散方法を考えたとき、人によってはアルコールやギャンブルを選び、そして家庭環境や人格があいまって、極度にのめりこんでしまうというメカニズムがあります。
様々な要素が絡み合うことで、依存が生まれてしまうのであり、パチンコをするだけで強い依存を生み出すわけではありません。このことをきちんとお伝えしたいと思っています。 |
| ─ 単なるパチンコ好きと、パチンコ・パチスロ依存症との違いはどのようなところにあるのでしょうか? |
やはりとにかく頻繁に行きたくなる、という点です。パチンコ好きの方は、自分の小遣いや家計の範囲で打ち、余裕が無くなればお給料日まで我慢することが出来るでしょう。しかし依存症の方は「とにかく行きたい、とにかく打ちたい」と感じてしまいます。頭では「また負けるかもしれない」とわかっているのに、「わかっちゃいるけどやめられない」というセルフコントロールを失った状態に陥ってしまいます。これが依存症です。そうなると、仕事よりもパチンコを優先させてしまったり、他人からお金を借りたりしてまでパチンコに行ってしまう、そうすると当然借金が増えてしまいますよね。そんな生活に陥ってしまえば、人間関係を壊してしまいます。最終的には、自分の生活が破綻してしまうという恐れがあります。 |
| ─ パチンコ依存症には、自分自身が自覚していないことも多いと思うのですが‥? |
良いご質問ですね。私達もこのことをきちんと訴えて行きたいと思っていることなのですが、依存症は「否認の病」と言われています。どういうことかと言いますと、家族や仕事の仲間から「依存症ではないか」と言われるほどに、傍からどう見ても依存症の傾向があったとしても、自分自身では自覚をしていないと言うことです。本人が自覚できる、ということが非常に難しい病気なんです。そこをどう自覚させるか、と言うことが非常に大切です。治療プログラムなどでも重視されている点です。
あともう一つは、ご本人が自覚できていない代わりに、ご家族など本人を取り巻く周囲の方々に対して、予防啓発を行うことも必要です。実を言いますと、このホームページでプログラムを公開してからと言うもの、ご家族の方からのお問い合わせが多数寄せられました。メールであったり、時にはお電話を頂いたり、更には直接オフィスまでいらっしゃった方もいました。その方は「息子がパチンコ・パチスロにはまってしまい、借金を抱えとても困っている」と、藁にもすがる思いでいらっしゃったとお話してくださいました。なにしろご本人にとっては「否認の病」ですし、周囲の方からしても「依存症だ」と断定することは難しいことです。ですのでご本人、そして周囲の環境に対しても依存症の正しい知識と理解を深めていかなければなりません。
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| ─ どのような治療が必要なのでしょうか? |
具体的にご紹介いたしますと、「投薬による治療」「精神療法による治療」「ネットワークセラピー」の3つの治療法をご紹介しています。
一つ目の「投薬による治療」では、特効薬と言うものはありませんが、病院やメンタルヘルスクリニックなど専門医療機関にご相談をして、しかるべき投薬をして頂くことが必要です。当ホームページで治療先の斡旋はしていませんが、依存症の治療をしている施設様に対し、紹介させていただいてもいいか一軒一軒お電話をし、「依存症治療施設一覧」として載せています。ご本人やご家族が治療施設を探すのに役立てていただければ、と思っています。
ご紹介している施設では「精神療法による治療」も行われています。依存症の治療でよく行われているのが「グループ療法」です。先ほど「否認の病」と申しましたが、やはり「自分は依存症なんだ」と気づくことが治療の出発点であり、最も重要なことです。それを気づかせる為に周りがワーワー言っても仕様がありません。そこで「グループ療法」では、パチンコ・パチスロ依存症で治療中の方たちと一緒に自分の体験を語り合うんです。そして「他の人も自分と同じような体験をしているんだな。」と共感し合い、自分も依存症であることを自覚できます。グループの人数は施設によって様々ですが、それ程大人数ではなく、10人から20人位だと思います。
最後に「ネットワークセラピー」ですが、家庭環境に対してアプローチしていくことです。先ほどお話しましたが、やはり家庭環境に問題がある場合は、ご本人がどんなに頑張っても環境を変えなければ本当の治療にはなりません。ご自分の家庭環境を振り返ってみて、「自分は辛い環境で生活してきた」と受け入れたり、ご家族とお話しする機会を設けたりして、家庭環境の改善へのアプローチをすることも非常に重要です。
やはり一番大切なことは、「自分だけで抱え込まないで欲しい」ということです。時間はかかりますが必ず解決する道はあります。今日本では自殺者数が4万人近くなっていますが、その中には借金苦の問題で亡くなる方もいます。依存症が招くかもしれない、怖い結果を防ぐ為にも、本当に「抱え込まないで欲しい」と思っています。当ホームページをご覧になることが治療への一歩となることを願っています。 |
| ─ 予防法で紹介されている、「メンタフダイアリー」とはどのようなコンテンツでしょうか?沢山の方が参加されていますが、どのような効果が期待できるのでしょうか? |
「メンタフダイアリー」は当社で運営しているコンテンツで、「認知療法」がベースになっています。周囲の出来事や他人からの言葉を自分の中でどのように受け入れるか、というのは人それぞれですよね。前向きに考えられる人もいれば、マイナスに受け取りストレスとして溜め込んでしまう人もいます。「認知療法」ではそういったマイナスの認知や判断を、もっと合理的に前向きに変えていくことを目的としています。まず「なぜ自分はそう考えたか・行動したか」ということを冷静に振り返ってみます。例えば「パチンコに3日連続で行った」という日記をつけたならば、「なぜパチンコに行ったのか」と冷静に考えてみることにします。そして資金が無いのに行ってしまったという「頭ではわかっているのに止められない」という混乱した不安な気持ちを書き、もし「もう一人の自分がいたらどうするだろうか?」と客観的に考えてみます。その上で「完全にパチンコを止めることは無理!」と判断したならば「パチンコへ行く回数を減らす。」そして「減らすためにはどうすればいいのか?」という風に合理的な考えを促します。このように解決法を考えることによって、少しでも不安感を取り除くことができます。この一連の思考訓練により、いつも陥ってしまう嫌なパターンから抜け出すことを目指しています。
また、「グループ療法」も取り入れています。「メンタフダイアリー」では自分の日記を公開したり他の方の日記を読んでコメントを書くことが出来ます。2006年での依存症関連の書き込みはおよそ2000件となりました。そしてその中では依存症の方同士がコメントを書き励まし合っています。オンラインではありますが、自分の気持ちを整理しながら、他の人とも同じような苦しみを共有できるという場になっています。一日の平均ダイアリー投稿総数は10件ほどですが、そのうち6,7件は依存症の方の投稿です。また平均コメント投稿数の半分を占めるのも依存症の方の投稿です。
実のところ、このコンテンツを作った段階ではこんなにも依存症の方の日記が増えるとは考えていませんでした。まだまだ「どれだけの人に、どれだけの効果があった」という数字は出せませんが、依存症に苦しむ人の手助けになればと思っています。 |
| ─ 予防法のLAC法について教えていただけないでしょうか? |
「ラック法」と読みますが、これは「認知療法」の考えに似ていて、日本語では「生活分析的カウンセリング法」と言います。「生活分析的」という所がポイントなんですが、もっと先にやるべきことがあるのに、パチンコに行ってしまっているご自分の生活を客観的に振り返ることから始めます。まず、「やりたいと思っていること、やらねばならないこと」を思いつくまま、付箋紙1枚に1項目ずつ具体的にどんどん書いていきます。内容は仕事、趣味、健康、家庭、娯楽やお金の返済など具体的にどんどん書き出すことが重要です。そしてその付箋を項目ごとに表に貼り、一目でわかるようにします。そしてそれを見てみると、「自分にはパチンコ以外にもこんなにやることがあるんだ」とわかり、「じゃあパチンコをするのは、これが全部終わってからだ」と考えることが出来るでしょう。自分には守るべき生活があるということに気づき、「パチンコのために生活がある」のではなく、「生活を続けるからこそパチンコも出来る」ということをわかってもらうことが必要です。その上で、「やらなければならないこと」の中での優先順位をつけて、実行していくことを目指します。
付箋を貼る表はホームページから簡単にダウンロード出来ますので、ご自身でこのサイトを見ながらご活用してみてください。 |
| ─ 利用者数には何か傾向があるのでしょうか? |
| 昨年12月末に取りまとめたアクセスのレポートによりますと、一日におよそ1000人がこのサイトに来ています。商業サイトに比べるととても少ないですが、社会貢献活動のサイトとしては圧倒的な数字です。また皆さんがこのサイトでどのようなコンテンツを見ているかという調べでは「依存症セルフチェック」のページが多いという結果が出ました。ちなみに一昨年2005年度の調査では、依存症の説明や症例についてのページがトップでした。ここで考えられるのは、これまではご家族の方が依存症の症例を確かめに来ていたのではないかという事です。しかし最近は「自分は依存症ではないか」と心配になった方がご自分で調べに来ている、と考えることが出来ます。 |
| ─ 実際に運営をしていく中で苦労・工夫した点、また困った点などあればお聞かせ下さい。 |
やはり本人にとっては否認の病ですので、ご家族への情報提供を増やすようにページ構成を工夫しました。例えば「ソーシャルアクション」というページを設けていまして、当社に寄せられるメールの中には、「このページのおかげで助かりました」という声も頂いています。
苦労した点はパチンコ・パチスロ依存症をどう定義づけるか、という点ですね。我々は「依存症には様々な要因があり、パチンコそのものが『悪』ではない」ということコンセプトにし、それを伝えるために沢山の心理学の先生からお話を聞きました。しかし先生によって様々な意見があり、それをどうまとめていくか、という点では苦労しました。 |
| ─ 今後はどのような活動をなさっていく予定でしょうか? |
このサイトを携帯電話でも見られるように、携帯版サイトを製作中です。3月までには公開できる予定です。パチンコユーザーの全てがパソコンが出来る環境にあるわけではありませんので、携帯での需要は高いと思っています。もっと沢山の方に依存症について知って頂きたいと思っています。
それからもう一つ、依存症の方の書き込みに専門家がアドバイスできるようなコンテンツを計画しています。書き込んだ人は自己理解を深め、同じように依存症の方とも相互理解をしていただくと同時に、専門医の先生からもご意見いただけるようにしたいと思っています。 |
| ─ 最後に全国のパチンコ、パチスロファンにメッセージをお願いします。 |
| やはりパチンコ・パチスロは魅力的な娯楽ですので、もっと健全に楽しんでいただきたいということですね。そして頭の片隅にでも、パチンコ・パチスロ依存症という病気があることを留めていただきたいです。そして周りの方にもこのホームページをご紹介いただき、一人で抱え込む方がいないように予防していただけたら、と思っています。 |